製造業のT社は「従来型のBOM管理の煩雑さ」「社内情報共有の非効率」といった課題を抱えていました。Google Workspace×スプレッドシート×GAS(Google Apps Script)を活用することで解決しました。そのプロセスと成果をご紹介します。
1.導入の背景
- BOM管理の煩雑さと更新ミス
製品の構成要素を管理するBOM(部品表)をExcelで管理していましたが、バージョン管理が不十分で誤った設計情報に基づくリスクがありました。 - 部門間の情報共有不足
開発部門と製造部門の間で最新情報をリアルタイムに共有できず、メールや紙ベースの資料に頼っていたため、業務の非効率が発生していました。 - DX推進に対する不安
数千万円の大規模投資には踏み切れず、どこから着手すべきか分からない状況でした。
2.解決策の提案
T社の課題をヒアリングした上で、「まずは小規模のモックアップで効果を体感してもらう」ために、Google Workspaceの導入とスプレッドシート+GASによる簡易BOM管理トライアルシステムを提案しました。
導入ステップ
1)要件定義・ヒアリング
・開発・製造・管理それぞれの担当者から、Excel運用時の課題・使い方をヒアリングし、どのような機能を最小限で実現すれば課題が緩和できるかを整理しました。
・担当者が考える理想像を共有してもらいつつ積み上げ型で課題解決を推進する計画を提案しました。
・合わせて計画の成果を評価するためのKPIを定義しパイロットシステム準備時の効果判断指標とすることを提案しました。
2)パイロットシステム作成(スプレッドシート+GAS⇒PDF定型様式出力)
・スプレッドシート上でBOM情報を一元管理しました。
・GASを使って「変更履歴の自動記録」「担当者への通知」など拡張機能を実装しました。
・従来様式のイメージから直感的に操作しやすく、Excelからの移行がスムーズに進むデザインを追求しました。
・客先提出用の定型様式PDF等の自動生成に対応して作業時間の削減を実現しました。
3)トライアル運用・評価
・2週間〜1ヶ月の期間で一部製番品・部品に対して試験運用しました。
・担当者への操作レクチャー、トラブルシューティングを並行して実施しました。
4)評価フィードバックと本導入検討
・トライアルの結果、どの程度業務効率化に寄与できたか定量・定性で評価しました。
・従来型業務に関わる作業時間とトライアル製番に関わる作業時間を比較評価して期待した時間改善と共に、データの2次利用における効率化を検証しました。
・経営層にもデモを実施して、DX導入の価値を実感いただきました。
3.導入による効果
- リアルタイム更新とバージョン管理の徹底
Googleスプレッドシートの導入により、クラウド上で常に最新のBOMデータを共有可能になり、GASを活用して変更履歴の自動記録や権限管理を強化することで、誤操作や上書きミスを防ぎ、情報の一元化によって業務の正確性が向上しました。 - 社内コミュニケーションの活性化
Google ChatやMeetと連携し、BOM変更時にリアルタイムで製造部門へ通知されることで、情報共有の遅延を防ぎ業務の迅速な対応が可能となり、部門間の連携がスムーズになり、会議や調整時間の短縮にも貢献しました。 - 小規模投資で実感したDX効果
数千万円規模の投資をせずに、初期の要件定義+トライアルシステムの構築費用、Google Workspaceの月額ライセンス費用+保守費用でスタート可能となり、導入効果を確認しながら段階的にDXを進めることで他部門にもDXの波及効果が生まれました。
4.担当者の声(T社 技術部 DX推進担当者様)
「最初はとにかく“DX”という言葉だけが先行して、不安ばかりでした。しかし、クラウドワークスさんの提案でスプレッドシートを使った簡単な仕組みをすぐに試せたことで、自社の業務改善のイメージが一気に具体化しました。今では『もっと社内でこの仕組みを広げていきたい』とみんなが言っています。」
5.今後の展望
T社は、今回のトライアルで得た成果を踏まえ、社内の勤怠管理システムや品質管理、顧客管理など、さらなるGoogle Workspace連携を進める計画を立てています。
「大掛かりな予算をかけず、小さく始めて大きく育てる」アプローチがDX導入成功のカギとなりました。スプレッドシートを起点としたGAS開発は工数が比較的低く、担当者が独自にメンテナンスできるため、継続的な保守費用を抑えつつ、必要な機能強化のみ随時アップデートする柔軟な運用が可能になります。
